商品情報・ストア Feature Signature Series 究極の解像度と圧倒的なステージ感のために ニアフィールドパワードスピーカー『SA-Z1』開発者インタビュー

Signature Series
究極の解像度と圧倒的なステージ感のために
ニアフィールドパワードスピーカー
SA-Z1』開発者インタビュー

2019年夏にドイツ・ベルリンで開催された国際コンシューマ・エレクトロニクス展「IFA 2019」で発表され、オーディオファンの注目を集めた、Signature Series最新モデル『SA-Z1』。「ニアフィールドパワードスピーカー」と定義されたその製品が果たしてどのようなものなのか、ソニーで数々の傑作スピーカーを手掛けてきた音響エンジニア・加来欣志ら開発陣が語る。

Signature Series『SA-Z1』が提案する
究極のニアフィールドリスニング体験

まずは『SA-Z1』がどういう製品なのか、概要からお話ください。

商品企画 本橋

商品企画 本橋

商品企画 本橋:『SA-Z1』は、ソニーが2016年からスタートしている「Signature Series(シグネチャーシリーズ)」の新製品です。Signature Seriesではこの約3年間、屋内および屋内のパーソナル空間で究極のハイレゾ体験を提供してきましたが、『SA-Z1』では、その世界をいよいよスピーカーまで拡げることになります。より具体的には、スピーカーならではの良さである、目の前に広がる広大なステージ感に加え、音がつかめそうなくらいの究極の解像度を目指して企画・開発されました。

もちろん、従来のホームオーディオ機器でも究極の解像度は実現できます。しかし、そのためにはシステムから環境作りも含めると、とても高額な投資が必要になりますし、物理的にとても大きなものになります。また、部屋の音響特性などの影響も受けやすいので、それを配慮したセッティングも必要になります。『SA-Z1』では、コンパクトなスピーカーを近距離で聴くことで部屋の音響特性などの影響も受けにくいニアフィールドリスニングにおいて、PCやウォークマンなどとケーブル一本で繋ぐだけで、究極の解像度とステージ感が楽しめるパワードスピーカーというコンセプトを実現することができました。

今、お話にでてきた「ニアフィールドリスニング」とはどういったものなのでしょうか?

本橋:「ニアフィールドリスニング」とは、スピーカーならではの目の前に広がるステージ感と、音が直接耳に届くヘッドホンのような解像度の高さを同時に楽しめるリスニングスタイルです。机の上に置いたスピーカーの至近距離にリスナーが座ることが特徴で、大型のスピーカーを使った「ファーフィールドリスニング」とも、「ヘッドホンリスニング」とも異なる、第3のリスニングスタイルとも言われています。

この発想自体はずいぶん前からあったのですが、ここに来て大きな波が来つつあります。近年流行りのヘッドホンアンプにプリアウト機能が搭載され、パワードスピーカーと繋ぐだけで簡単にスピーカーリスニング環境を作れるようになってきたためです。そして、この流れを受けて、国内外のパーソナルオーディオ愛好家の間でにわかに「ニアフィールドリスニング」への注目度が高まってきています。

その一方で、ニアフィールドリスニングを想定した、音質面で満足のいくパワードスピーカーの選択肢が少ないという声も上がり始めています。ユーザーの期待値と市場のラインナップの間にギャップができはじめているのです。『SA-Z1』はそうした潜在ニーズの高まりをソニーとして獲得していくことを狙った製品となります。

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究極の解像度を実現するため
音源位置と時間軸のズレをゼロに

前段でお話いただいた“理想のパワードスピーカー”を実現するため、『SA-Z1』ではどのような技術を盛りこんでいるのかを聞かせてください。

音質設計 加来

音質設計 加来

音質設計 加来:通常のホームオーディオ向けスピーカーは、2〜3mの距離を離れて聴くことを前提に作っており、ニアフィールドリスニングのように間近に置いて聴くことを想定していません。ですので、たとえば普通のブックシェルフ型スピーカーを机の上に置いてニアフィールドリスニングを行おうとすると思うような音にならないことがあります。その原因は、音源位置と時間軸のズレです。

まず前者について説明していくと、通常のスピーカーはトゥイーター、ウーファーなど、複数のユニットをエンクロージャー前面に上下に並べて配置しており、上に配置したトゥイーターが高音を、下に配置したウーファーが低音をと、元の音を帯域分割しそれぞれが担当する帯域の音を鳴らす仕組みになっています。こうしたスピーカーで音楽を聴く際は、ある程度、聴取距離が離れていれば、各ユニットから放出された音の波が混じり合い、1つの音に合成されて聴こえるのですが、スピーカーがリスナーの目前にあるニアフィールドでは、音が合成される前に耳に届いてしまい、音の出る位置の違いがはっきり分かってしまって、違和感を覚えてしまうのです。
後者もそれと同じで、ニアフィールドリスニングでは、トゥイーターから出る高音と、ウーファーから出る低音が同時に耳に届くよう、これまで以上に厳密に時間軸をしっかり揃えなければなりません。そこで『SA-Z1』では、まず音源位置と時間軸の揃った音を作ることを目指して技術を深掘りしていきました。それが結果的に究極の解像度に繋がっていくというわけです。

なるほど。ではまず音源位置をどのように揃えていったかをお話いただけますか?

加来:『SA-Z1』では、最前面に配置された「I-ARRAYシステム」中央のメイントゥイーターと、エンクロージャー内のメインウーファー、そしてそれと背中合わせに配置されたアシストウーファーを同軸上に配置することで、音源位置を揃えています。こうした同軸配置は過去の製品でもチャレンジしているのですが、それをこれまでにないレベルで厳密にやろうというのが、メカ設計の木下に出した命題です。

メカ設計 木下:加来のリクエストを受けて、メカ担当としては2つのことをやりました。1つが、個々のユニットの軸を厳密に合わせて配置していくこと。ここで役立ったのが、ソニーでカメラのレンズを作っているSGMO(ソニーグローバルマニュファクチャリング&オペレーションズ株式会社)の持つ知見とノウハウです。

最前面に配置された「I-ARRAYシステム」

メカ設計 木下

メカ設計 木下

加来:カメラのレンズは、ドーム状のレンズを複数枚、同軸上に配置して作りあげていくのですが、そこにはわずかなズレも許されませんよね? CADや図面上で揃えるのは簡単なのですが、できあがった実際のレンズのどこが中心なのかを見つけだし、それをズレなく組み上げていくにはとてつもない技術力が必要とされます。今回、『SA-Z1』でやりたいこともまさにそれ。SGMOからはたくさんのアドバイスをいただき、理想の精度を実現できました。

木下:そしてもう1つが、機械的に精度を出して組み上げていくにあたり、介在する部品を最小化していくことです。通常、個々のユニットはバッフル板を介して接続していくのですが、それだとやはり精度を出せません。そこで『SA-Z1』では、それぞれのユニットをダイレクトに接続するなどして、ズレを最低限に抑え込んでいます。また、その上で、それぞれの部品の精度を極限まで高めるようにしています。

そうした工夫でどれくらいズレが変わってくるものなのですか?

木下:細かい数値はお出しできないのですが、ミクロン単位で測定するズレの数値が、一桁変わるレベルの違いがあります。

加来:今回目指しているのは究極の解像度ですから、そこには徹底的にこだわりました。

続いて時間軸のズレをどのように解消していったのかも聞かせてください。

加来:『SA-Z1』の原理試作の段階で、D.A.ハイブリッドアンプの試作機を複数台使ってエンクロージャーやユニットの検証を行っていました。当然ですがクロックが同期していないためトゥイーターとウーファーで若干の時間的なずれが生じます。調整をしながらエンクロージャーやユニットの開発を進めていたのですが、同時に完全に時間軸をコントロールできたら本当にすごい音になるんじゃないかという期待も芽生えたんですね。そこで『SA-Z1』ではそのズレを限りなくゼロにすることを目指しました。

アンプのズレを完全になくすというのはどれくらい難しいのでしょうか? 『SA-Z1』には多数のユニットが搭載されていて、これらのタイミングを揃えるということになりますよね?

電気設計 堀内

電気設計 堀内

電気設計 堀内:『SA-Z1』ではメイントゥイーター、アシストトゥイーター、メインウーファー、アシストウーファーを、後ほどお話しするD.A.ハイブリッドアンプで個別に駆動しています。そのため、それぞれに対してデジタルとアナログ、2つのアンプを用いており、それらが左右にあるわけですから、合計16chのアンプの時間軸を揃えなければなりません。汎用のICでは実現できず、『SA-Z1』のために専用に設計したFPGAを左右に1つずつ使用しました。

加来:凄まじくハードルが高いということは分かっていたのですが、ホームオーディオを長年やってきた者として「マルチ駆動でやりたい」という想いもありました。ですので、そこは検討段階からマストでやろうと考えていました。

堀内:でも実は当初、加来の要望はアンプの時間軸のズレを数十マイクロ秒以下にしたいというものだったんです。ところが、開発が進むにつれどんどんそれが短くなっていき、最終的にはゼロにしたい、と(笑)。

「IFA 2019」で展示されたパーツ

そうしないと究極の解像度は得られない、と(笑)。

加来:そうですね(笑)。

堀内:最終的には、各ユニットの位置の違いを吸収するために、それぞれの位置に合わせて個別に出音のタイミングを調整できるようにしました。これは各アンプのバッファ量を高精度に調整することで実現しています。さらに、ユーザーの手で切り替えて調整できる仕組みまで入れ込むのはなかなか大変でした。結果、『SA-Z1』に搭載されているFPGAは、Signature Seriesのヘッドホンアンプ『TA-ZH1ES』に搭載されているものと比べて、片方だけでも数倍の規模のものを採用しているんですよ。

加来:さらに左右のスピーカーを接続するケーブルも『SA-Z1』のために専用開発。左右のFPGAが高精度マスタークロックに併せて動作するゼロレイテンシ伝送を実現しています。

究極の解像度を実現するため音源位置と時間軸のズレをゼロに にいいね

「音道」と「つづみ構造」で
拡がるステージ感
この形には意味がある

ここまでのお話で、『SA-Z1』がどのようにして究極とも言える解像度を実現していったのかが分かりました。対するステージ感についてはいかがでしょうか? どのような技術でそれを実現していったのかを聞かせてください。

メカ設計 木下

加来:ニアフィールドリスニングにおけるステージ感の表現については大きく2つの工夫をしています。1つ目が、本体最前面に配置されている「I-ARRAYシステム」。これは、2010年に発売され、私が開発に携わった『SS-NA2ES』というパッシブ型のスピーカーで初搭載されたもの。この製品では自然な音色を作るということを目標にしており、それを実現するために、メイントゥイーターを上下に挟みこむようにアシストトゥイーターを配置し、指向性を高めたI-ARRAYシステムを新開発したのですが、できあがってみると指向性を広くすることで、ステージ感も拡がるという学びがありました。そこで『SA-Z1』にもこのI-ARRAYシステムを搭載し、高域の指向性を広げています。

そして、今回はさらに低域の指向性を広げる工夫も追加しています。低域の音は部屋中に充満する『SS-NA2ES』のようなファーフィールドスピーカーでは必ずしも必要なかったのですが、ニアフィールドで聴く『SA-Z1』では、低域のフォローも必要になるためです。具体的には「音道」と「つづみ構造」という構造体を新たに考案しています。

その「音道」と「つづみ構造」についてもう少し詳しく教えてください。

加来:「音道」は、アシストウーファーが後方に放出する音を横に出すための通り道です。今回、パーソナル空間での利用を考えたとき、設置場所の後方に壁があるであろうことは想定できました。そうした中、そのまま低音を後ろに出してしまうと、壁の材質や距離によって音が変わってしまいます。それでは使い勝手が非常に悪くなってしまうので、後方の壁を自分の中に作ってしまおうというのが「音道」の狙いです。これによって設置場所にかかわらず、自然な音の広がりと高い解像度、そして充分な音圧を実現できるようになりました。パッと見、ただの穴に見えるかも知れませんが(笑)、実はそうとうシミュレーションした結果、この形状にたどり着いているんですよ。

木下:材質もかなり考えました。内部損失や剛性、比重などさまざまなパターンの組みあわせを加来に試聴してもらい、具体的にはお話できないのですがホームオーディオではあまり使われず、メカ的にも難度の高い材料を採用しています。

加来:もう1つの「つづみ構造」は、2基のウーファーをエンクロージャーにどのように固定するか、どこと繋いで、どこと繋がないと効果的なのかということなんですが、考えられる構造を全て試していった結果、2基のウーファーを真鍮のパイプで繋いで背中合わせにしたこの形状になりました。その形がたまたま楽器のつづみに似ていたので、「つづみ構造」と名付けています。

  • アシストウーファーの「音道」

  • 真鍮のパイプをつないでできた「つづみ構造」

本橋:これは副次的な効果なのですが、メインウーファーとサブウーファーを対向配置することで互いの振動がキャンセルされ、筐体の不要な振動が低減されるというメリットも生まれています。

「音道」と「つづみ構造」で拡がるステージ感 この形には意味がある にいいね

新素材GaNで実現した
最新D.A.ハイブリッドアンプを搭載

ここまででたくさんの高音質へのこだわりと技術の話をお伺いしましたが、それ以外にも行っている工夫はありますか?

電気設計 塩原

電気設計 塩原

加来:『SA-Z1』では、高音質化のため、考え得るさまざまなことをやっていますが、解像度とステージ感、双方を高める手法として、歪みの低減についても話をさせてください。『SA-Z1』では音の歪みを低減するために3つのことをやっています。1つがD.A.ハイブリッドアンプの搭載、2つ目が100kHz再生、そして3つ目がエンクロージャーの剛性アップです。ここでは順を追って1つずつ説明していきます。

電気設計 塩原:先ほど、堀内の話にも出てきましたが、『SA-Z1』ではD.A.ハイブリッドアンプというデジタルアンプとアナログアンプのそれぞれの特徴を組み合わせたアンプを利用しています。これは、2016年に発売したヘッドホンアンプ『TA-ZH1ES』で初搭載されたもので、今回はそれをスピーカー駆動に必要な大出力対応や、次にお話しする100kHz再生対応など大幅に進化させたものを搭載しています。

実は他社にもハイブリッドアンプを使った製品は存在するのですが、それらはあくまでアナログアンプがメインで、デジタルアンプは発熱を抑えることを目的に使っているものが多いです。その点、我々のD.A.ハイブリッドアンプは、増幅はデジタルで行い、アナログアンプはデジタルアンプで使うデバイスの特性限界によるノイズや歪みを補正するというものになっています。

「D.A.ハイブリッドアップ」の動作原理イメージ

なぜそうした設計になっているのですか?

塩原:デジタルアンプのメリット、特にD.A.ハイブリッドで採用したフルデジタルアンプは、ハイレゾのデジタルデータを、デジタルのまま増幅できるからですね。そこにはデータに含まれる情報のロスなどはありません。

2つ目の100kHz再生についても聴かせてください。人間の可聴音域が20kHzとされている中、そこまでの帯域にこだわったのはなぜですか?

塩原:確かに人の耳は20kHzくらいまでしか聴き取ることができないのですが、今回の「I-ARRAYシステム」を最大限に活かすためにはアンプの周波数特性を拡げる必要があります。例えば周波数特性が40kHzのアンプの場合、半分の周波数の20kHz付近では音の大きさは同じでも位相回転による時間軸の変化が起こり、スピーカー(トゥイーター)の位置が前後方向に数ミリズレたことと同じことになります。せっかくメカ精度と信号処理で音の時間軸を揃えてもそれでは意味がありません。この時間軸のズレは周波数特性を拡げれば拡げるほど小さくなり100kHzまで拡げればほとんどなくなります。そこで『SA-Z1』では、D.A.ハイブリッドアンプの周波数特性を一気に拡大し、100kHzの再生と同時に「I-ARRAYシステム」の究極の解像度をサポートしています。

これらを実現するために、どのような技術を使われたのかも教えてください。

塩原:先ほどもお話したように、D.A.ハイブリッドアンプは当初はヘッドホンアンプのために作られました。その場合、出力は数W程度でも充分なのですが、今回はスピーカーを駆動させるということで出力を数十倍まで高めています。ただ、そうした大出力で100kHz再生を実現するためには、より誤差の少ない高精度なデバイスが必要となります。そこで『SA-Z1』のD.A.ハイブリッドアンプでは、窒化ガリウムベースのデバイス 「GaN(Gallium Nitride/ガリウムナイトライド)-FET(電界効果トランジスタ)」を採用しています。

窒化ガリウムという素材にはどのようなメリットがあるのでしょうか?

塩原:デジタルアンプで利用するスイッチングデバイスに窒化ガリウムを利用すると、電気的な信号の立ち上がり、立ち下がりがとても速く、立ち上がってから残る抵抗成分も非常に小さくなります。その結果、優れたオーディオ特性と音質が得られると同時に発熱が抑えられ、アンプ部をコンパクトにできるのも大きなメリットです。今回のように8×2chものアンプを載せなければならない場合、それが非常に効いてきます。

ここまでのお話をまとめさせてください。『SA-Z1』では、GaN-FETを利用したデジタルアンプでデジタル信号を増幅し、その際にわずかに発生する歪みをアナログアンプの理想波形できれいに補正してあげるという理解であっていますか?

塩原:はい。ただし補正といっても化粧で言うならば本当に薄化粧です。GaN-FETを導入することでデジタルアンプ部は十分な性能といえますが、さらにD.A.ハイブリッド技術によってフルデジタルアンプとしての良さを最大限に引き出しています。

このほか、D.A.ハイブリッドアンプ周りでこだわった点はありますか?

塩原:電気回路を本体のどこに内蔵するか、ですね。パワードスピーカーを普通に作るとエンクロージャーの中にアンプを入れるという発想になってしまうのですが、このサイズでそれをやるとスピーカーの音圧をアンプが受けて、音質が劣化してしまうという問題が起こります。

木下:そこで『SA-Z1』では、スピーカーのエンクロージャーと電気回路を収納するシャーシを分け、その上で、きちんと1つのボディとなるように繋いでいます。具体的には、なるべくスピーカーの振動が伝わらないよう、エンクロージャーの背面四隅からアーム型のブリッジを出し、そことだけシャーシを接続する構造にしました。

また、その上で、エンクロージャーの下には5mm厚鋼板の底板を配置。ここでも振動を吸収するようにしているほか、なるべく設置場所の影響を受けないようにする効果も狙っています。

この複雑な形状にはそういった意味があるんですね。

木下:さらに、振動伝搬を抑える工夫として、アルミ製エンクロージャーをあえて分割したということもお伝えしておきたいです。普通に考えるとこの部分は押し出し加工で筒状にする方がローコストなんですが、そうして作ったエンクロージャーをコンコンと叩くと、振動がいつまでもグルグル回り続けてしまうんですね。そこで、今回は6枚のアルミ板を箱状に組み合わせる形でエンクロージャーを作っています。この際、利用するビスを極力減らし、それでいて構造強度も高めるため、日本の伝統的な木組み技法を採用。アルミ板同士を、間にゴムダンパーを入れているのですが、それも振動の抑制に一役買っています。

加来:ちなみに、見た目からは分かりにくいのですが、エンクロージャーを構成する6枚のアルミ板のうち、側面の2枚だけは、ほかのものと組成を変えています。いろいろな組みあわせを試したのですが、それが最も高音質だったためです。

木下:アルミの組成を変えると、表面の黒いアルマイト加工の発色も変わってしまうので、メカ設計的には難易度が上がってしまうのですが、加来がどうしてもやりたいと言うので(笑)、がんばって色が揃うようにしています。

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最高の音で遊べる懐の広さも
SA-Z1』の魅力
ぜひ、SNSでその楽しさを共有してほしい

『SA-Z1』は充実したインターフェイスも特長の1つに挙げられます。最高の音質を追求するのであればデジタル入力だけで良いような気がするのですが、φ3.5mmステレオミニ端子やXLR端子、さらにはRCA端子まで用意しているのはなぜなのでしょうか?

本橋:『SA-Z1』がターゲットとしているユーザーは、ヘッドホンリスニングの高解像度と、スピーカーリスニングのステージ感の両方を追い求めているパーソナルオーディオ愛好家。ハイエンドになればなるほど嗜好性が拡がっていく中、デジタルからアナログまで、あらゆる環境でケーブル1本繋げば、究極の音楽体験ができるようにしたかったからです。

もちろんソニーとしてのおすすめはデジタル接続なのですが、実はアナログ接続もすごくて、全て11.2MHzのDSDに変換をしてフルデジタルアンプに流しており、こちらも最高の音質で楽しんでいただけます。たとえばお好みのアンプとアナログ接続して、ピュアオーディオ的な楽しみ方をしても面白いんじゃないでしょうか。

あらゆる機器と接続して究極の音楽体験が楽しめる

デジタルの方もUSB(USB Type-B)のほか、WM-PORT、そして光デジタル(角型)にまで対応。これだけ入力系統が多いと、内部の処理も大変なものになりそうですね。

堀内:このように多くの入力信号に対応するために、アナログもデジタルも一度、全てFPGAで受けて処理しています。ただ、こうしたおかげで、768kHz/32bitのPCMであったり、22.4MHzのDSDであったり、汎用ICではカバーすることが難しい音源にも対応できるようになりました。

さらに、社内の研究開発部門と協力してDSEE HXやDSDリマスタリングといったソニー独自の機能も搭載しています。FPGA内部ではこうした信号をすべてデジタル信号のまま16ch分出力し、後段のD.A.ハイブリッドアンプによる100kHz再生を実現しています。

本橋:こういった信号処理を行いながら、高精度に同期をとって16ch分も同時に処理するというのは大変なことなんです。ソニーの誇る信号処理技術の粋を集めたものになっていると思います。

ソニーだからできたと言っても過言ではなさそうですね。

加来:そして、その上で、よりお好みに合わせた音質に切り替えていただけるよう、4つの音調整機能を用意しました。『SA-Z1』は、PCやオーディオプレイヤーと1本のケーブルで接続するだけで良いというのが売りなのですが、それは逆に言うと、楽しみ方の選択肢が減るということでもあります。4つの音調整機能にはそれぞれ、I-ARRAYシステムのタイムアライメント切り替え、背面アシストウーファーの周波数範囲、アシストウーファーのオン/オフ、D.A.ハイブリッドアンプの動作モードを切り替える機能を割り振っているので、これまでの環境で曲毎にケーブルを交換して最適な音を探すような楽しみ方をしていただければと思っています。

なるほど。ソニーの考える最高の音をただ押しつけるのではなく、これまで通りの、自ら好みの音を探していく楽しみも味わえるようにしているんですね。

本橋:これ、ともするとオマケ機能のように思われてしまうかも知れないのですが、4つの音調整機能で変更できる32パターンの組みあわせ全てを加来がきちんと検証・調整するなど、ものすごく手間がかかっているんですよ。

そこまでしてこの機能を実現したかったのはなぜですか?

本橋:実はパーソナルオーディオ愛好家の間では、自分の好きなアーティストや曲に対してベストと思うプレイヤーやケーブル、アンプの組み合わせを探し出したり、その組み合わせをSNSなどで仲間と共有するという楽しみ方がされています。そういった楽しみを『SA-Z1』でも実現したかったのです。自分の好きな音源に合わせて4つの音調整ツマミを回してベストと思う組み合わせを見つけ出したり、その使いこなし方を写真に撮って仲間とSNSで共有して盛り上がったりすることで、『SA-Z1』を長く楽しんでいただけるようになりますし、新たな魅力を発見できるのではないかと考えています。

なるほど、SNS時代の楽しみ方も考えた上での機能なんですね。

最高の音で遊べる懐の広さも『SA-Z1』の魅力 ぜひ、SNSでその楽しさを共有してほしい にいいね

推しのアーティストに触れそうな気にさせる
圧倒的な解像感・ステージ感を
体感してみてほしい

それでは最後に、読者に向けてメッセージをお願いします。

本橋:繰り返しになりますが、PCやウォークマンなど、既にお持ちの機器とケーブル1本で繋ぐだけで最高の音楽体験ができることが『SA-Z1』のポイント。ぜひ、愛用のプレイヤーやお気に入りの音源をソニーストアにお持ちいただき、その音質をお試しいただきたいですね。

そして、ここで声を大にしてお伝えしたいのが、女性音楽ファンの方にお試しいただきたいということ。実はすでに何人かの女性社員に試聴をお願いしているのですが、皆、推しのアーティストが目の前で歌ってくれているかのようだと大喜びしてくれました。「手を伸ばせば触れるんじゃないか」と(笑)。そんな、アーティストの吐息すら感じられるようなサウンドを感じてみてください。

塩原:『SA-Z1』は、音の入口から出口まで、全てソニーのオリジナル技術で固め、最適なチューニングを施した状態で100kHzの高音質をお試しいただけるのが売り。エンジニアとして、より多くの方にその音を聴いてほしいと願っています。なおその際、CDとハイレゾで同じ曲をお持ちの場合、ぜひともそれを聴き比べてみてください。CDも素晴らしい音質で再生できるのですが、ハイレゾはそれ以上であり、はっきりとした違いを感じていただけるはずです。

堀内:『SA-Z1』はソニーでなければ作れなかったと断言できる製品。I-ARRAYシステムやD.A.ハイブリッドアンプなど、数あるソニーの独自技術の中でも、最高峰と認められている技術がさらに進化した形で盛りこまれています。それらを組みあわせ、最適なかたちに練り上げられた1つのシステムとして、その実力をご確認いただければ。

木下:私も皆と同じく、とにかく一度聴いてみてほしいという気持ちです。なぜかというと、私が初めて『SA-Z1』で音楽を聴いたときに、その解像度の高さに鳥肌が立つほど感動したから。この感覚って、この製品でなければ味わえないものだと思っています。

加来:私は公私ともに長らくホームオーディオの世界にどっぷりと浸かってきた人間です。そんな私が『SA-Z1』をまずどういう人に聴いてみてほしいかと問われたら、自分のようなホームオーディオファンだと答えます。というのも、『SA-Z1』の音に触れる感じ、アーティストにギリギリまで近付いて聴く感じは、ホームオーディオとはまた違った音楽体験で、聴いていただければ音楽に新たな発見があるのではないかと思うからです。これまで体験したことがなかったもの。ニアフィールドリスニングというスタイルを体験してみてください。

※本インタビューは2019年11月に実施しています

編集後記

取材の合間、実際に『SA-Z1』で、そのサウンドを体感することができました。これまで何度か「ニアフィールドリスニング」を謳う環境で音楽を聴いたことがありますが、『SA-Z1』の作り出す音響空間はそれらとは違い、 “誰にでもすぐ分かる”レベルで、まるでシンガーが目と鼻の先にいるかのような感覚になりました。
ソニーストア直営店舗では、USBメモリーにお気に入りの楽曲データを入れて持ち込めば『SA-Z1』で聴かせてくれるので、この感覚をぜひ体験していただきたいと思いました。

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ウォークマンWM1シリーズ[メモリータイプ]
NW-WM1Z
「音」に込められた想いまで届ける。ナチュラルでアコースティックな領域まで再現する無酸素銅切削筐体モデル
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追求したのは空気感の表現。ソニー最高峰の技術を注ぎ込んだフラッグシップモデル
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